債務を相続しないための相続放棄
   

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  ホームページを立ち上げてから,債務を相続しないための相続放棄についての問い合わせ
(および手続きの依頼)が意外と多く,独立した項目で紹介することにしました。

お問い合わせの内容を大きく2通りに分けると次のようになります
(簡単な事例にして紹介します)。


[相談1]
先日、父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。ところが、父親は財産は残してない反面、生前多額の借金を抱えており相続財産よりも債務の方が多くなりそうなので、相続放棄をしたいのですが、どうしたらいいのでしょうか。


[相談2]
先日、父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。父は、財産を残してくれてはいるのですが,個人事業をしていた関係で債務も残っています。長男が債務をすべて引き継ぐ代わりに,父の事業も引き継ぐつもりでいます。事業には携わらない長女の私と妹は,どのような相続手続きをとることが有効なのでしょうか。
   
     
 


1.相続放棄の手続きのポイント

 
  相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから,3ヶ月内に家庭裁判所に対して申述をもってしなければなりません。

ポイントを4つにまとめました。

(1)期間が限られているということ。
    相談を受けたときには、すでに期間を経過してしまっていて相続放棄が認められなかったと
    いう話しは、しばしばありますので要注意です。
    なお、相続人が、債務を含めて相続財産がまったくないものと信じていたために、相続放棄
    の手続きをとらずに期間を経過してしまった場合に、様々な事情から相続人がそのように信
    じてしまったことに相当の理由があれば、期間を猶予してもらえることもあります。

(2)家庭裁判所に対しての申述が必要になること。
    単なる意思表示や相続人間における確認書の作成では効力は生じないことに注意してくだ
    さい。被相続人の方が、亡くなられる前に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に申述
    という手続きになります。

(3)ご自分が相続放棄されることによって、新たに相続人となってしまう方がいないか
  
 確認してください。
    相談[1]の件では、お父様がお亡くなりになったということですが、子供全員が相続放棄す
    ることによって、お父様の尊属(お父様のご両親など)が相続人となったり、尊属がいなけれ
    ば、お父様の兄弟姉妹が相続人となります。これは、新たに相続人となった方が債務を相
    続するということを意味します。そのため、新たに相続人となる方とも連絡をとり、一緒に手
    続きを進めた方がいいでしょう。

(4)相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには、相続人は単純承認した
 
   ものとみなされ、相続放棄することができなくなることがあります。
 
 
2.[相談2]についての解説
  考えられる方法として、遺産分割協議による方法と相続放棄による方法があります。

はじめに、遺産分割協議による方法のメリット・デメリットから紹介していきます。
事業には携わらないおふたりが,お父様の積極財産(土地などの資産)の一部を相続したい
場合には、遺産分割協議の中で、積極財産の分配方法の取り決めとともに、債務を長男が相続することを取り決めておきます。
ここで、注意しなければならないのは、遺産分割協議の中で、長男が債務を単独で承継するという取り決めをしても、これは当事者間で効力を有するにとどまり、債権者には対抗することができないということです。
そのため債権者に、債務は長男が単独で承継する旨の承諾をもらっておかなければなりません。

一方おふたりが相続放棄の手続きをとれば、債権債務すべて長男が承継することになります。(この場合おふたりは、土地などの積極財産を相続することもできません)。
相続放棄をしたということを知らない債権者から、問い合わせや支払いの催告がきた場合も、相続人ではない旨伝えて、法律上当然に支払いの拒絶をすることができます。
通常、家庭裁判所で交付してもらえる「相続放棄受理証明書」を提示することで理解してもらえます。