相続に際しては、多くの手続きが必要になってきます。
ここでは、不動産の登記手続き(名義変更、名義書換)の流れを中心に紹介しています。
また,相続登記,相続手続きに関するご依頼,お問い合わせは,
下記の連絡先まで,お気軽にどうぞ。

〒100-0014
東京都千代田区永田町二丁目17番5号 ローレル永田町401号 
司法書士 庵 原 正 人

電話 03-6277-3778(直通) 港区赤坂から移転して電話番号が変更になりました。
FAX 03-3597-0188
メールでのお問い合わせはこちら

 ※日祭日はお休みです。土曜日は、お休みの場合もありますので、
   相談のお申し込みをいただける場合には、事前に連絡を入れておいて下さい。
   (もちろん、メールでのご相談は、休みの日に入れておいていただいて結構です。)
   また,会社帰りにも,寄っていただけるように夜間の相談も受け付けています。
   お気軽に,お問い合わせ下さい。

   地図は、こちらをご覧下さい。

   

不動産の贈与について

相続手続きについて

遺言について

相続放棄について

株式会社・有限会社
の登記手続きについて


住宅ローンを返済された方へ

会社の資産管理・保全について

     
 


1.相続人の確定

 
相続人の確定を間違えてしまうと、大きなトラブルにも発展しかねません。相続人1名でも除いてなされた遺産分割協議は、無効になってしまいます。また、あとから、除外された相続人が権利を主張してくることもあるでしょう。
被相続人の親族関係が把握できていない場合や複雑な場合などには、被相続人(亡くなった方)の子供の頃から死亡に至るまでの戸籍を手がかりに、民法や判例、戸籍先例を当てはめて、相続人を確定していく作業も必要になってきます。
しばしば受ける相談例を「Q&A」形式でまとめましたので、ご参考にして下さい
(上の「1.相続人の確定」をクリックして下さい)。
 
 
2.相続財産の確定
   
  次に、被相続人(亡くなった方)の持っていた財産や権利をリストアップしましょう。
被相続人名義の土地や建物、預貯金や有価証券などの権利も相続の対象となります。
これらが全部でどれくらいあるのか、確定させる必要があります。

また、被相続人の債務も相続することになります。債務の方が明らかに多いと分かる場合には、相続放棄の手続きをとることをお勧めします。この手続きについては、
「2.債務を相続しないための相続放棄」で紹介していますので読んでみて下さい。
債務が住宅ローンなどの場合には、保険が適用になる場合がありますので、金融機関など貸主に問い合わせてみるといいでしょう。

遺産分割協議は、相続財産が把握できてからということになります。
   
 
3.遺言の有無の確認
  相続人の確定と相続財産の確認作業と並行して、遺言が残されているか確認して下さい。
一般的には、自筆証書遺言公正証書遺言がよく利用されています。

上の「3.遺言の有無の確認」をクリックしていただければ、これらの遺言が見つかったときの対応のしかたを紹介しています。
遺言があれば、そこで指示されている財産の配分方法が優先されます。
その財産については遺産分割協議は不要になります

また,遺言の記載方法及び譲受人が相続人であるかどうかによって,相続登記になるか,遺贈による登記になるか異なってきます。
被相続人から、生前に、「遺言を書いておいた」と伝えられていたにもかかわらず、遺言が見つからないときは、公証役場に問い合わせをしてみて下さい。公正証書遺言をしているかどうかが分かります。
公正証書遺言の謄本や控えが残ってなくても調べてもらえます。

また、公正証書遺言を作成するには、証人が必要ですので、心当たりがあればその方に問い合わせてみるのもいいでしょう。
 
4.遺産分割協議
  遺言がない場合、または遺言で全財産の配分について指示されていない場合の相続財産の配分は、法定相続人全員の協議で決めることができます。これを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割協議書を作成して法定相続人全員が署名し実印を押印します。
各相続人には法定相続分割合が定められています。しかし、遺産分割協議においては、いままでの各相続人と被相続人との関係や、各相続人のこれからの生活等を考慮して配分方法を決めることも可能です。
 
5.司法書士の仕事の内容
  司法書士に相続登記手続きを依頼した場合、どこまでやってもらえるのか、反対に、どのような仕事はご自身でおこなうものなのかという疑問があると思います。
そこで、遺産分割協議で相続登記をすることにした場合の仕事の流れを簡単にご紹介します。

(1)はじめの打ち合わせの中で、相続財産をどのようにしたいかを確認させていただきます。

(2)相続対象物件がはっきりしない場合には、こちらでも調査します。

(3)当方で、固定資産評価証明書を取得し、相続登記の登録免許税(登記申請のとき国に支払う税金)を計算します。

(4)当方で、相続人を戸籍上確定させるために必要になる一連の戸籍の手配をし、相続関係説明図(法律で定められている形式の家計図)を作成します。

(5)その他登記申請に必要になる書類一式をこちらで作成、手配しますので、内容を確認されたうえ、ご捺印いただいて、印鑑証明書とともに、当方に渡していただきます。

(6)法務局に登記申請します(登記完了まで10日前後)。

(7)登記完了後、新しい登記識別情報と登記簿謄本を法務局から回収します。

(8)完了後の書類を、内容を説明したうえで、返却します。

このような流れになりますが、もちろん、1件ごとに内容が違いますので、はじめの打ち合わせのときに、あらためてご案内致します。

以上は、主に、手続きの代理というサービスを紹介してきました。
しかし、われわれに登記手続きを依頼していただける場合には、もっとお役に立てるようなサービスを提供していけるようにならなければと考えております。

たとえば、依頼者である相続人の方が、遺産分割の方法について迷っている場合、適切なアドバイスができるようにしなければなりません。また、相続人間でなされた遺産分割がわれわれ専門家の目からみて、将来、トラブルのもとになり得るような内容であった場合にも、登記の前に、一言、問題点を指摘してあげられなければなりません。
さらに、登記完了後、登記を受けた方が、今度はご自身に万が一のことがあったとき、今回
取得したその不動産をどのように相続させるのがいいのか、アドバイスを求められることもあります。
われわれがいただく報酬は、このようなサービスを含むものであると考えています。

上の「5.司法書士の仕事の内容」をクリックしていただければ、費用についても説明しています。
 
6.そのほか、相続と不動産に関するQ&A
  (1)平成15年4月から、当面の間、相続登記の登録免許税が軽減されるのですか。

(2)相続登記をしないでおいて大丈夫ですか。

(3)相続した不動産に昔の抵当権がついたままになっているのですが。

(4)被相続人が、アパート「○○荘」を誰々に相続させるという遺言を残していたのですが、
   
これで相続登記はできますか。

(5)権利証が見つからないのですが、相続登記はできますか。
 
1.誰が相続人になるか
 
    第一順位 ・・・・・・ 被相続人(亡くなった方)の子
    第二順位 ・・・・・・ 被相続人の直系尊属(被相続人の親、親死亡の場合祖父母)
    (子がいない場合)    
    第三順位 ・・・・・・ 被相続人の兄弟姉妹
    (子・直系尊属共にいない場合)    
    配偶者 ・・・・・・ 被相続人の配偶者は常に相続人となる
      (各順位の相続人と同順位となります)

〈具体例で紹介〉
(いままであった相談の一部をまとめてみました)
 
Q1
   祖父が亡くなりました。その相続人は、本来ならば、祖母とその長男であった父が相続
   人となるところでしょうが、祖父が亡くなる前に、私の父も亡くなっています。祖父の遺産
   相続について、私も祖母と共に相続人となるのでしょうか(父も私も一人っ子で他に兄弟
   はいません)
   (回答欄では、祖父様をX、お父様をY、貴方様をZとして、記載させていただきます)
 貴方も相続人となります。
   これは、民法で定められている代襲相続という規定によります。被相続人の子が被相続人の
   相続開始前に死亡しているときには、その者の子がこれを代襲して相続人となるという規定です。
   ここでは、YがXの相続開始前に死亡しているときには、Yの子であるZが、Yを代襲して相続人に
   なる、と当てはめることになります。
Q2
   先日、同居している義父が亡くなりました。私の主人は数年前に亡くなっています。
   義母もすでに亡くなっていますので、主な親族は、亡主人と私の子である長女と長男で
   す。私たち家族が現在住んでいる建物は、義父が所有していましたが、私はこの建物を
   相続することができるのでしょうか。
 義父の相続について、貴方は相続人になれません。
   この相談も代襲相続に関わります。被相続人の子が被相続人の相続開始前に死亡しているとき
   には、その者の子がこれを代襲して相続人となるという規定ですから、貴方の長女、長男お二人
   が亡ご主人様を代襲して相続することになります。

   ここで、よく、混同されるのが、次の相談例です。
Q3
   先日、主人が亡くなりました。私たち家族が現在住んでいる建物は、10年前に亡くなっ
   
義父が所有していましたが、義父の相続人が主人1人であったこともあり建物の登記
   はいまだ、義父名義になっています。主人の相続人は、私と長女、長男の3名です。
   私は、義父が所有していた建物を相続することができるのでしょうか。
 建物を相続することができます。
   こちらの相談は、代襲相続ではありません。義父様に相続が開始して、ご主人様が単独で相続し
   ているので、建物の所有権は、すでに、ご主人様に移っています。この相談の事例では建物の
   登記名義が義父様のままであったということにすぎません。
   このたび、ご主人様が亡くなって、その相続人である貴方と長男、長女の3名が相続人になりま
   すので、建物について、3名共有で相続するとすることもできますし、遺産分割協議で、貴方の単
   独所有にすることも可能です。
  Q4
   私の(推定)相続人を確認していただきたく相談しました。
   20年ほど前1度離婚しています。先妻との間に長男、現在の妻との間に長女がいます。
   離婚しているので、先妻は相続人にならないとは思うのですが、長男は相続人になるの
   でしょうか。もしもなるとした場合、私が所有者となっており、家族が住んでいる家は、
   妻と長女と長男の共有になってしまうのでしょうか。
   長男とは、あまりうまくいってないため、私の死後も、妻が、現在の家に住み続けられる
   ようにしたいのですが、いい方法はありませんか。
   長男も相続人となります。奥様が現在の家に住み続けられるようにするため
 
  には、遺言を残しておくことをお勧めします。
   遺言を残していない場合、家を奥様の単独所有にするためには、相続人全員の協議をもって
   遺産分割協議をおこなうことが必要になります。また、協議がまとまらない場合、家庭裁判所に
   調停の申し立てをすることも可能です。
   しかし、遺言を残しておけば、これらの手続きが不要になり、相続人、特に奥様にかかる負担が
   軽くなるのではないでしょうか。
  Q5
   現在、30年以上一緒に生活している内縁の妻がいます(子供はいません)。
   一身上の都合で籍は入れていないのですが、私の全財産を妻に相続させることはできる
   のでしょうか。

   内縁の妻は、相続人とはなりません。
   そのため、奥様に相続させるためには、もちろん、籍をいれるという方法があります。
   しかし、それが難しいようでしたら、相続人とはなりませんが、奥様に相続財産を遺贈する旨の
   遺言を残しておかれるのがいいでしょう。
   なお、遺言を残さなかった場合、お子様はいらっしゃらないとのことなので、
   尊属(ご両親など)がご健在でしたら、尊属へ、尊属がいらしゃらなければ、兄弟姉妹へ
   全財産が相続されることになります。
 
〈債務を相続しないための相続放棄〉
  ホームページを立ち上げてから,債務を相続しないための相続放棄についての問い合わせ
(および手続きの依頼)が意外と多く,独立した項目で紹介することにしました。

お問い合わせの内容を大きく2通りに分けると次のようになります。
(簡単な事例にして紹介します)

[相談1]
先日、父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。ところが、父親は、財産は残してない反面、生前多額の借金を抱えており相続財産よりも債務の方が多くなりそうなので、相続放棄をしたいのですが、どうしたらいいのでしょうか。


[相談2]
先日、父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。父は、財産を残してくれてはいるのですが,個人事業をしていた関係で債務も残っています。長男が債務をすべて引き継ぐ代わりに,父の事業も引き継ぐつもりでいます。事業には携わらない長女の私と妹は,どのような相続手続きをとることが有効なのでしょうか。
 
1.相続放棄の手続きのポイント
    相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから,3ヶ月内に家庭裁判所に対して申述をもってしなければなりません。

ポイントを4つにまとめました。

(1)期間が限られているということ。
   相談を受けたときには、すでに期間を経過してしまっていて相続放棄が認められなかった
   という話しは、しばしばありますので要注意です。
   なお、相続人が、債務を含めて相続財産がまったくないものと信じていたために、相続放棄
   の手続きをとらずに期間を経過してしまった場合に、様々な事情から相続人がそのように
   信じてしまったことに相当の理由があれば、期間を猶予してもらえることもあります。

(2)家庭裁判所に対しての申述が必要になること。
   単なる意思表示や相続人間における確認書の作成では効力は生じないことに注意してくださ
   い。被相続人の方が、亡くなられる前に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所に申述とい
   う手続きになります。

(3)ご自分が相続放棄されることによって、新たに相続人となってしまう方がいないか
   確認してください。

   相談[1]の件では、お父様がお亡くなりになったということですが、子供全員が相続放棄する
   ことによって、お父様の尊属(お父様のご両親など)が相続人となったり尊属がいなければ、
   お父様の兄弟姉妹が相続人となります。これは、新たに相続人となった方が債務を相続する
   ということを意味します。そのため、新たに相続人となる方とも連絡をとり、一緒に手続きを進
   めた方がいいでしょう。

(4)相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには、相続人は単純承認した
   ものとみなされ、相続放棄することができなくなることがあります。

 
2.[相談2]についての解説
    考えられる方法として,遺産分割協議による方法と相続放棄による方法があります。

はじめに,遺産分割協議による方法のメリット・デメリットから紹介していきます。
事業には携わらないおふたりが,お父様の積極財産(土地などの資産)の一部を相続したい場合には,遺産分割協議の中で,積極財産の分配方法の取り決めとともに,債務を長男が相続することを取り決めておきます。ここで,注意しなければならないのは,遺産分割協議の中で,長男が債務を単独で承継するという取り決めをしても,これは,当事者間で効力を有するにとどまり,債権者には対抗することができないということです。そのため,債権者に,債務は長男が単独で承継する旨の承諾をもらっておかなければなりません。

一方,おふたりが相続放棄の手続きをとれば,債権債務すべて長男が承継することになります。(この場合,おふたりは,土地などの積極財産を相続することもできません)。
相続放棄をしたということを知らない債権者から,問い合わせや支払いの催告がきた場合も,相続人ではない旨伝えて,法律上当然に支払いの拒絶をすることができます。通常,家庭裁判所で交付してもらえる「相続放棄受理証明書」を提示することで理解してもらえます。
 
3.遺言の有無の確認
    Q1
   自筆証書遺言(被相続人が自書した遺言)が見つかったのですが
     家庭裁判所で、遺言の検認という手続きが必要になります。
   まず、開封されていないか確認して下さい。開封されていない場合には、開封しないで下さい
   (勝手に開封してはいけないことになっています)。
   開封したいのが心情でしょうが、開封してみたところ、遺言作成時に塗りつぶすような形で
   訂正していたために、あらぬ疑いを持たれてしまうこともあるかもしれません。
   そういうこともあってか、家庭裁判所で相続人などの面前で開封しましょうということになって
   います。これを検認手続きといいます(※)。

   そこで、自筆証書遺言が見つかった場合には、そのことを他の相続人にも伝えてあげるととも
   に、家庭裁判所へ検認手続きの申し立てをして下さい。家庭裁判所というと、構えてしまう方も
   いるかと思いますが、裁判とは違いますし手続き自体もそんなに難しいものでもありません。
   もちろん、ご高齢ご多忙などの理由でわれわれに手伝ってもらいたいとご連絡いただければ
   喜んでお引き受け致します。     

   (※) 自筆証書遺言の場合、検認手続きは必ず経なければならないことになっています。
       また、この遺言に基づいて相続登記を申請する場合にも、検認を経たものでなけ
       ば受理してもらえません。
       しかし、検認手続きは、遺言の内容の真否や有効・無効を判断するものではあり
       ません。
       たとえば、自筆証書遺言が有効であるためには、自書されていること、日付が記
       載されていることなどの要件がありますが、これらが欠けていた場合には、検認を
       経たからといって有効になるわけではありません。
       また、本当に本人の意思で作成されたものであるのか疑問があり争いたければ、
       別に訴訟手続きを利用しなくてはいけません。
   

Q2
   
公正証書遺言(公証人が立ち会って作成された遺言)が見つかったのですが。

     公正証書遺言の場合、家庭裁判所における検認手続きは不要です。
   
そのため、相続登記の申請にもそのまま使えます。ただし、ご自宅などで見つかったのが
   公正証書遺言の謄本でなく、コピーであった場合には、公証役場から謄本を取り寄せる必要
   があります。コピーと謄本の判断ですが、公証人の印が朱肉でなく、色黒でしたら、コピーだ
   と分かります。
    Q3
   遺言に、遺言執行者が定められていたのですが。面識がない方なのですが、
   連絡をとらないとまずいですか。
     遺言執行者が定められている場合には、遺言執行者にも連絡して下さい
   遺言執行者が定められている場合には、遺言執行者が遺言の執行に必要な範囲で管理処
   分権を持ちます(遺言執行者は遺言で定められた範囲においてその権限を有します)。
   相続人は、遺言執行者の管理処分権を持つ部分については、相続財産の処分その他遺言の
   執行を妨げるような一切の行為をすることができなくなります。そのため、相続人がその範囲
   内の相続財産についてなした処分は無効になると解されていますが、なによりトラブルの原因
   になりますので、連絡をとるようにしてください。
 
4.遺産分割協議について
   
〈具体例で紹介〉
(いままであった相談の一部をまとめてみました)
    Q1
   夫が亡くなり、妻の私と子供2名が相続しました。
   遺産分割協議をおこないたいのですが、次男はまだ、15歳で未成年です。
   どうすればいいのでしょうか。

    A 家庭裁判所で、次男のために、特別代理人を選任する必要があります。
   
この場合、母である貴方は、未成年者である次男を代理して遺産分割協議をすることはでき
   ません。
   貴方も相続人となっているために、母と子の間に利益が相反するもの考えられるからです。
    Q2
   夫が亡くなり、妻の私と夫の兄弟3名が相続しました。遺産分割協議をおこないたい
   のですが、夫の兄弟の中に、10年近く生死不明で行方不明の者がいるため,
   遺産分割協議ができません。どうすればいいのでしょうか。
    A 不在者の財産管理人選任という手続きと失踪宣告という手続きの2通りが考えられま   す。 
   遺言が残されていない場合、または残されていても相続分の指定がされているにとどまる
   ときには、遺産分割協議をしなければ、個々の相続財産も相続分割合に基づいた共有になり
   ます。これは、相続人中に行方不明者がいたとしても変わることはありません。

   この場合には、他の相続人等の利害関係人は、行方不明者のために、家庭裁判所に対して
   不在者の財産管理人の選任を求め、不在者の財産管理人が行方不明者に代わって遺産分
   割協議に参加することができます。

   不在者の財産管理人は、原則として、財産の管理行為しかおこなうことができませんが、
   家庭裁判所の許可を得ることによって、遺産分割などの処分行為をおこなうことができます。
   したがって、この相談例では、不在者の財産管理人の選任申し立てと共に、権限外の行為
   (遺産分割協議)をおこなうについての家庭裁判所の許可も得る必要があります。

   もうひとつ、この相談例の場合には、失踪宣告という手続きをとることも可能です。これは、
   原則として、7年以上、生死が分からない場合に、利害関係人の請求により生死不明の者に
   ついて失踪の宣告をして、死亡したものと取り扱う制度です。
   この方法を採ると、失踪宣告を受けた者は、失踪期間の満了の時に死亡したものとみなされ
   るため、不在者に子供がいる場合には、その子供が代襲相続人として遺産分割協議に参加
   することになり、不在者に妻子がいない場合には、残りの兄弟2名が相続人となり、事実上、
   貴方とご主人様の兄弟2名との間で、協議することができます。ただし、この失踪宣告は、
   大変重大な効果を生じさせるものであり、また、親族としては、元気に戻ってきてもらいたいと
   願うのが通常であるため、実際には、始めに紹介した不在者の財産管理人を選任する方法
   が多く採られています。
    Q3
   父が亡くなり、私たち子供3人が相続しました。相続財産と言えるものは、事実上、
   私と父が一緒に住んでいた土地建物だけです。引き続き、この家に住み続けたいの
   ですが、遺産分割をしようにも、他に遺産がありません。他の相続人も納得するような
   いい方法はありませんか。

    A 代償分割という遺産分割方法が考えられます。
   遺産分割の原則的な方法は、現物分割という方法です。これは、「A不動産は相続人Xに、
   B不動産は相続人Yに」というような、遺産(現物)そのものを相続人に分けるものです。
   しかし、この相談例では、1人の相続人(貴方)が不動産を取得してしまうと、他の相続人が
   遺産を取得することができなくなってしまうため、現物分割はできません。

   このような場合には、ある特定の相続人に、その相続分を超える遺産を与える代わりに、
   他の相続人が、遺産を得た相続人から金銭を支払ってもらう方法(代償分割)が認められて
   います。実務でも多くみられる分割方法です。

   ただし、この方法を採るにあたって一番問題になるのが、代償金を支払わなければならない
   貴方にその資力があるかということです。相続人によっては、一括払いを求めてくる場合も
   多く、実際、後日のトラブルなどを考えると一括払いの方が望ましいとも言えるでしょう。
   しかし、一括では無理だけれども、分割であれば支払えるということであれば、保証人をつけ
   たり、その不動産に抵当権をつけることを認めることで話しをまとめることもできるかもしれま
   せん。

   また、遺産分割協議書を作成するにあたっては必ず代償分割する旨を明記しておくことです。
   代償金に贈与税が課されないように注意する必要があります。
 
5.司法書士の仕事の内容

    Q1
   半年前、父が亡くなり、相続人である母と私を含めた兄弟3名で、父が所有していた
   物件を母に相続させる旨の遺産分割協議がまとまりました。物件は、新宿区で、一戸
   建ての建物と土地1筆です。依頼した場合、相続登記の費用はどの位かかりますか。
 
     実費と当方報酬とに分けてご説明します。

   実費としては、
   (1) 固定資産評価証明書代=都内2通で800円
   (2) 戸籍や住民票代=全部で15通位として8,000円程度
   (3) 相続登記申請前にする登記簿の閲覧=土地建物で1,000円
   (4) 登記申請にかかる登録免許税
                        =土地建物の評価額合計2000万円とすると80,000円
   (5) 戸籍等の手配のための郵送料、法務局までの交通費など=5,000円程度
   (6) 登記完了後の登記簿謄本代=2,000円
                   
                                (1)から(6)の合計=96,800円程度

   当方報酬としては、
   書類作成、戸籍等手配、登記申請代理、日当等すべて含めて=52,500円程度

   これを合計すると、
   実費(96,800円程度)+当方報酬(52,500円程度)=150,000円程度
   となります(税込)。

   ※報酬については、物件の筆数が多かったり相続人の総数が多い場合、若干高くなります。
      一方、すでに、戸籍をお持ちでしたり、依頼者の方で一部でも手配していただければ、
      実費のほか、当方報酬を安くできます。
      もちろん、ご連絡いただければ、事前にお見積もり致します。
      (報酬額が52,500円を超える場合には、受任するにあたってご案内させていただきます)
    Q2  
   都内の物件の他に、遠方の物件もあるのですが、引き受けてもらえるのでしょうか。
   また、引き受けてもらっても、都内の物件を依頼する場合に比べて、交通費や日当
   など相当費用がかかってしまうのでしょうか。

     もちろん、お引き受け致します。
   物件が、遠方の場合には、当方で、現地の法務局まで出張していると、交通費や日当で、
   相当な費用がかかってしまうことがあります。
   そこで、原則として、依頼者との打ち合わせや書類の授受、書類の作成すべて当方でおこな
   ったうえで、現地の司法書士に、書留で書類を送付し、申請してもらう方法をとります。
   (司法書士間のネットワークがあります)。
   そのため、費用に関しては都内の物件を引き受ける場合とそれほど変わりません。
    Q3
   相続した物件はもともと我々相続人のものではないため、今回相続登記をお願いする
   にあたって、正確な物件所在地が分かりません。
   また、1筆なのか何筆かに分かれているのかも分かりません。こういう場合でも引き
   受けてもらえるのでしょうか。

     もちろんお引き受けします。
   相続登記をご依頼いただいて、一部物件に相続登記もれがあると後々大変なことになる場合
   も少なくはありません。
   実際、10年以上前に相続登記をどこかの司法書士事務所に依頼をし登記も完了している
   ところ、今回その不動産を売却しようと物件を調べると、未登記の私道部分がでてきてしまっ
   たというご相談も多いのです。

   その当時、遺産分割協議でハンコをいただいた方に再度登記の協力を得ないとその私道部
   分の相続登記はできません。年月がたってしまうとその方もお亡くなりになってしまっている
   かもしれませんし、再度協力してもらえるとも限りません。

   たった数平米の私道部分の登記がなされていなかったために、不動産の価値がつかず売却
   できないということもよくある話しなのです。
   そういう意味で、登記もれがないように登記を完了させるのも大切な仕事の一部だと考えてい
   ます。
 
6.そのほか、相続と不動産に関するQ&A
    Q1
   平成18年4月から相続登記の登録免許税の計算方法が変更になったと聞きました。
   具体的には、どうなったのですか。

    A 土地(評価額3,000万円)、建物(評価額1,500万円)を一括して相続登記すると
   いう例に挙げて説明します。

   平成18年4月から、不動産評価額の0.4%が課税される取扱いになりました。その結果、
   18万円となります。
    Q2
   やっておかなくてはと思いつつ、現在まで相続登記をしないでいるのですが、
   だんだん不安になってきました。やっぱりやっておいた方がいいのでしょうか。
   今からでも間に合いますか。
     相続登記には、期限の定めはありません。また、怠ったために罰金などが科される
   ことはありません。
   
しかし、多くの方が相続登記をしておきます。どうしてでしょうか。

   やはり、自分の財産は、登記を入れて権利を確保しておきたいと考えるからでしょう。
   たとえ、現在、相続人間の仲がよく不都合はなくても、時間がたち、相続人が増えてしまうと、
   話し合いがまとまらなくなることも考えられるからでしょう。

   以前、こんな相談を受けたことがありました。「父Xが亡くなって相続が開始し、子供たち兄弟
   AとBが相続人になりました。父Xの不動産にはそのままAが住み続けましたが、AとBは仲が
   よく、特段、不都合はありませんでした。その後、Aはその不動産を売却し、その資金で老人
   ホームに入りたいと考えるようになったというのです。その頃には、すでにBは亡くなり、その
   子供達が相続人となっていました。Aは、その不動産につき、Bの子供達と遺産分割協議
   (書を作成)した上で、A名義に相続登記をしてからでないと売却できないため、話し合いをし
   ました。しかし、一部協力が得られず、事実上、売却をあきらめざるを得ませんでした。」
   (遺産分割の調停という方法が残されていましたが、そこまではちょっと、ということでした)
 
   また、ご自身の死後、相続人につまらないもめごとの種を残さないようにという意味を込めて、
   相続登記をしておくという方も多いです。
    Q3
   相続した不動産に、昭和40年代に設定された抵当権が残ったままになっているので
   すが、これを抹消するためには、裁判によるしか方法はありませんか。こういう手続き
   は費用はいくら位かかるものでしょうか。
     まず、抵当権者は誰なのか登記簿で確認して下さい。
   
現在見かけない会社でも、それが銀行や信用金庫などの金融機関であれば、抵当権者とし
   ての立場は何らかの形で引き継がれていることが多いため、資料を調べていくことで、現在の
   会社にたどり着くことができると思います。

   そこで、担当部署の方と交渉をし、抹消書類をだしてもらうという流れになると思います。
   債務をすでに弁済しているかどうかも問題になりますが、いままで支払いの請求が来ていな
   いようでしたら、完済はしているものの登記だけが残ってしまっているということが多いです。

   抵当権者が、その他の一般の会社や個人であった場合も、金融機関の場合よりも労力は
   かかりますが、調べてみる必要があります。それでも、見つけることができなかったら、抵当
   権者が行方不明であるとして、所有者から単独で抹消することが認められる手続きが用意さ
   れています。
   お手元に債務を弁済したことを証明できる領収書等がある場合には、その領収書等を添付
   して、ない場合には、債務を供託所に供託することによって抹消することができます。

   抹消にかかる実費は登記簿謄本を見てみないと何とも申し上げられませんが、当方報酬は、
   抵当権者の調査代なども含めて、3万円~5万円と考えていただければと思います。
    Q4
   父が、私に対して、アパート「○○荘」を相続させるという遺言を残していたのですが、
   これで相続登記はできますか。
     可能ではありますが、遺言のほかに、相続人全員の確認書を添付しなければなりま
   せん。

   遺言で土地や建物を相続させるときには、本来、土地であれば「所在・地番・地目・地積」を記
   載することによって特定し、建物であれば「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を記載するこ
   とによって特定する必要があります。

   「○○荘」と言われても相続人ならばともかく、法務局(登記官)としてはそれがどこの建物な
   のか判断がつかないからです(登記官は提出された書類上でのみ審査できると決められてい
  るのです)。 

  しかし、すでに亡くなっている遺言者の意思を尊重してあげたいのも事実です。そこで、実務
  では、遺言のほかに、遺言に記載されている物件は、これこれに相違ありませんという相続人
  全員からの確認書をつけることで、受け付けてもらえることが多いです。

  しかし、遺言の便利なところは、遺言によって相続財産の配分の方法が定められている場合
  には、遺産分割協議が不要になることです。
  相続人の話し合いを経ないでいいという点にあります。相続人全員の確認書が必要となると
  いうことは事実上遺産分割協議が必要になるということです。

  そういう意味でも、せっかく残しておく遺言書は、記載方法にも注意しておきたいものです。
    Q5
  権利証が見当たらないのですが、相続登記はできますか。

     相続登記には、原則として、権利証は必要ありません。
  権利証は売買による所有権移転などの場合には、その方が本当に所有権を持っているのか
  本当に売却する意思があるのか確認するために、必要になります。
  しかし、相続登記の場合には、 これに代えて、戸籍や戸籍の附票、遺言、遺産分割協議書
  などで相続の事実を確認するために不要とされています。
  (ただし、遺贈の場合には、権利証が必要になります)